大阪港の河口に伸びる優美な斜張橋、天保山大橋。
主塔の高さは152メートル。灰白色のシルエットが空に突き抜ける姿は、大阪湾岸を象徴するランドマークとして親しまれている。
目次
昭和から平成へ ― 巨大プロジェクトの軌跡
1979年の計画当初は「安治川橋梁」と呼ばれていた天保山大橋。
1984年に着工し、7年の歳月と25億円もの工費をかけて、1991年9月18日に完成した。
港大橋に続く湾岸エリアの大規模プロジェクトであり、大阪港の発展を支える重要な一歩となった。
技術者たちの挑戦 ― 海と風を相手に
大型船舶が航行するため、桁下高は海面上およそ50メートル。
さらに、支持層が深さ35メートルという軟弱地盤。
厳しい条件を克服するために、偏平六角形箱桁という特殊な断面形状が採用された。
風に強く、ねじれにくい設計は、見た目の美しさだけでなく実用性を兼ね備えている。
世界初の耐震技術 ― せん断パネルダンパー
天保山大橋を特別な存在にしているのは、世界で初めて導入された「せん断パネルダンパー」だ。
地震時にはあえて一部を壊すことで揺れのエネルギーを吸収し、主要構造を守る。
「スマートに壊れる」という逆転の発想は、後の橋梁設計に大きな影響を与えた。
大阪湾岸の表玄関として
今も天保山大橋は、湾岸線を行き交う車両を支えると同時に、大阪の景観の一部として人々に親しまれている。
橋の真下には「天保山渡し船」が今も運航し、古き港町の暮らしと現代のインフラが同じ場所で息づいている。
天保山大橋の概要
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