暴れ川を制した鋼鉄の巨人──常願寺大橋、70年の物語

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富山の大動脈を支える「初の永久橋」

富山市の東部を流れる常願寺川。その河口から約3.1キロ地点に、どっしりと構える鋼鉄の橋がある。常願寺大橋だ。

全長365.5メートル、6連のワーレントラス構造。この橋は単なる交通路ではない。

「暴れ川」と恐れられた急流に、人々が初めて打ち込んだ「永久の杭」なのだ。

小舟から木橋、そして鋼鉄へ──渡河の歴史

明治以前、ここを渡るには「聖人松渡し」と呼ばれる小舟に命を預けるしかなかった。

激流に翻弄される小さな船。対岸はすぐそこに見えるのに、容易には辿り着けない。

転機は明治26年(1893年)。富山県が初めて木製の常願寺橋を架けた。

地域の人々にとって、それは「陸の道」が生まれた瞬間だった。

昭和に入ると、1928年に木桁橋が完成。上流の常盤橋とともに「姉妹橋」と親しまれた。

だが、木の橋では限界がある。暴れ川の猛威に、いつまで耐えられるのか──。

戦後復興の象徴、対日援助で生まれた「永久橋」

答えは1950年に訪れた。

対日援助見返り資金という、戦後復興の希望を込めた予算。

これを使い、常願寺川で初めての永久橋建設が決定する。施工は林建設工業。

1950年11月に着工し、約2年の歳月をかけて1952年10月、ついに竣工した。

鋼製下路曲弦ワーレントラス。最大支間長60メートル。

当時最新の技術を結集した、堅牢な構造。川底には強靭なケーソン基礎が打ち込まれ、暴れ川の激流にも屈しない設計が施された。

富山の橋梁技術の進化を、この橋は体現している。

進化し続ける橋──歩道橋の新設と補強工事

完成から27年後の1979年、下流側に歩道橋が新設された。

歩行者の安全性が大きく向上し、地域住民の生活はさらに便利になった。

1984年には床板の全面改修と補強工事を実施。

時代に合わせて進化し続ける橋の姿勢は、まるで生きているかのようだ。

かつての国道8号、今は国道415号の要衝

常願寺大橋はかつて国道8号の一部だった。

しかし1986年、滑川富山バイパスの開通に伴い、国道415号へと路線変更。

それでも富山市町袋と水橋市田袋を結ぶ重要な交通動脈であることに変わりはない。

幅員7.5メートルの橋面を、今日も多くの車両が行き交う。

「暴れ川」に挑んだ人々の意志

常願寺川は、かつて何度も氾濫し、人々を苦しめた。だからこそ、この橋には特別な意味がある。

鋼鉄のトラスが組み上がるたび、人々は思っただろう。「もう、川に負けない」と。

70年以上経った今も、常願寺大橋は静かに、しかし力強く立ち続けている。

暴れ川を制した鋼鉄の巨人として。


常願寺大橋 基本情報

項目内容
所在地富山県富山市町袋~水橋市田袋
河川名常願寺川
路線名国道415号(旧・国道8号)
橋の形式下路曲弦ワーレントラス橋(6連)
材料
全長365.5m[
最大支間長60m
幅員7.5m
施工者林建設工業
着工1950年(昭和25年)11月
竣工・開通1952年(昭和27年)10月11日/17日
工費約2億500万円(当時)
歩道橋竣工1979年(昭和54年)11月3日(延長360m)
管理者富山県富山土木センター
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