汗だくで巡るホイアン、そして日本橋との出会い
2025年夏、ベトナム・ホイアンの旧市街を、汗だくになりながら巡り歩いていた。
まぶしい快晴の青空の下、ふと目に入ったのは、絵画のような美しさと重厚感を併せ持つ「日本橋(Japanese Covered Bridge/Chùa Cầu)」だった。

朱色の壁と流麗な屋根飾り、歴史を感じる木の構造。周囲には観光客の喧騒と、川面を流れるゆったりとした空気。
まさに「時を超えるランドマーク」に出会えた瞬間だった。

17世紀に日本人によって造られた。
日本橋(Chùa Cầu)の歴史と伝説

往時の姿を今に伝えている。
この日本橋は16世紀末から17世紀初頭、国際交易港として活気を帯びていたホイアンで、日本人商人が自分たちの居住区と中国人街を結ぶために建てたものである。

象徴であることを説明する案内板。
単なる交通路ではなく、異なる民族・文化が交流する象徴であり、町の繁栄と平和を祈る場でもあった。
伝説によれば、地中の巨大ナマズの精(Namazu)を封じて地震や洪水を鎮める役目も担っていたという。
1719年には阮福澍侯王が橋を訪れ、「来遠橋――遠き客を迎える橋」と命名。両端には猿と犬の像が配され、その年の干支や魔除けの意味が込められている。

北の守護神・北帝鎮武を祀り、多くの参拝者が訪れる。
日本・中国・ベトナムの建築様式が見事に融合した造形美と、寺院空間としての神聖さが、今も多くの人々の心を惹きつけている存在である。
古写真でみる“変わらない時”の姿
100年以上前に撮影された古写真を見ると、当時の人々が橋の上でたたずむ様子や、橋周辺の緑豊かな風景がしっかりと残っている。

橋の上には当時の服装をした人々が並び、
往時のホイアンの風景を伝えている。
現代の眩しい日差し、観光客のざわめきの中でも、橋は静かに佇み続けている。
その変わらないシルエットが、時を超えた町の象徴であることを改めて実感した。
ホイアン日本橋(Chùa Cầu)の基本情報
項目 | 内容 |
---|---|
名称 | 日本橋(Japanese Covered Bridge、Chùa Cầu/来遠橋) |
場所 | ベトナム クアンナム省ホイアン市 明安区 |
建設時期 | 16世紀末〜17世紀初頭 |
構造 | 木造屋根付き橋、長さ約18m、幅約3m、両端に猿と犬の像 |
目的 | 日本人居住区と中国人街の接続、災害からの守護、異文化交流の象徴 |
入場料金 | 無料または旧市街共通券が必要(時期による) |
営業時間 | 24時間(夜間ライトアップ有) |
世界遺産等認定 | ベトナム国家歴史文化遺産(1990年)、UNESCO世界遺産(1999年) |
その他特徴 | 橋中央に寺院併設/20,000ドン紙幣にデザイン |
まとめ―橋で感じる歴史と物語
ホイアンを訪れたら、日本橋(遠来橋)の前で少し足を止めてみよう。
400年以上、この町と人々を見守り続けてきた橋の息遣い、歴史の重み、そしてその場でしか感じられない空気が、きっとあなたを包み込むはずだ。
歴代の写真を見比べれば、橋がどのように時を超えてきたのかが一目で分かる。
過去と現在が重なる瞬間を、旅の中でぜひ味わってほしい。