大阪城新橋 まつりに際してつくられた、大阪城を望む橋【大阪市中央区】

大阪城新橋【大阪市中央区】

大阪城ホール前の噴水広場から、読売テレビ、住友生命、KDDI、東京海上日動火災、富士通、日本電気など大手企業がオフィスを構える大阪ビジネスパークに向かう小さな橋が、大阪城新橋だ。この橋は歩行者専用で、橋の両詰めは10段ほどの階段になっており、左右にスロープが伸びている。ゆったりと幅の広い橋面は白と黒の石敷き、中央にはガス灯を模した街灯。公園橋らしく、景観に配慮したデザインだ。
大阪城と大阪ビジネスパークを行き来する時は、たいていこの橋を使う。大阪城公園駅で降りて大阪ビジネスパークに出勤するビジネスマンも渡っているだろう。小さい橋で、しかも公園橋ながら、交通量はそれなりに多いと思う。
大阪の八百八橋は、ほとんどが江戸時代まで歴史を遡ることができるけれど、大阪城新橋は昭和58年(1983年)竣工という、ごくごく最近の橋だ。

〈昭和期〉

昭和58年(1983年)、大阪城では大々的に「大阪築城400年まつり」が催された。
10月1日〜11月30日までの2か月間におよぶこのイベントは、大阪城公園一帯を会場とした地方博覧会で、国内外の企業・団体がパビリオンを設けて大いににぎわったという。ちなみに、平成19年(2007年)まで毎年行われていた「御堂筋パレード」は、もとをたどれば「大阪築城400年まつり」のオープニングパレードが第一回である。
この時、来場者を迎えるために新しくつくられたのが大阪城新橋であり、また、JR大阪城公園駅だ。
大阪城公園駅がなかった場合、大阪城公園の最寄りはJR・地下鉄の森ノ宮駅になるのだけれど、天守閣や西の丸庭園、太陽の広場などまではまだ距離がある。大阪城公園は広いのである。いくら駅を出てすぐ公園の入り口があって、天守閣が見えていようと、のんびり歩いていたら天守閣まで20分くらいはかかるだろう。
まあ、天守閣が公園の中心にある以上、どんな最寄駅から行ったってそれなりに時間はかかるのだけれど、少なくとも大阪城公園駅は、森ノ宮駅よりはるかに太陽の広場に近い。太陽の広場というのはいわばグラウンドで、催し物があるたびに会場としてしばしば利用されているから、「大阪築城400年まつり」に合わせて太陽の広場に近いところに新駅をつくったわけだ。ちなみにこの前年、昭和57年(1982年)には大阪城ホールが着工しており、この最寄駅は文句なしに大阪城公園駅である。後々の需要も見越しての新駅建設だったのだろう。
駅ができれば付近の人の往来は増える、ということで、新しく橋も建設されることになった。大阪城新橋は、大阪城公園と大阪ビジネスパークをつなぐ小さな橋で、歩行者専用になっている。
なんだか橋の周辺の話ばかりだが、大阪ビジネスパークのことにも触れておきたい。
大阪ビジネスパークは大阪砲兵工廠の跡地で、戦後しばらくは更地のまま放置されていた。再開発が始まったのは1960年代に入ってからで、オフィスや飲食店、ショッピングモールなどが入った高層ビルが次々に建てられていく。まつりの直前、昭和58年(1983年)9月には、大阪ビジネスパークのシンボルであるツイン21が着工した。
こうして見てみるとこの一帯は当時、新しい動きを見せて盛り上がっていたのだということがよくわかる。
さて、そんな中で架けられた大阪城新橋である。
大阪城公園に近く、イベントに訪れるお客さんを迎えるための橋で、これから発展するであろう大阪ビジネスパークにもほど近い。そんな橋をお粗末なものにするわけにはいかないと、景観との調和には大いに気を遣ったようだ。特に、大阪城天守閣との調和が重要課題である。大阪城ホールだって、周囲を石垣で囲ったりして大阪城に気を遣っている。大阪城新橋も大阪城に敬意を払わないわけにはいかない。
もっとも、デザインの決定には工期の制約も多少はあったらしい。まつりに間に合わなければどうしようもないからだ(大阪城新橋の着工は昭和57年12月なので、1年もない。不発弾の探査から始まったというのが、なるほど大阪砲兵工廠の跡地らしい)。加えて言うと、大阪城新橋が架かる第二寝屋川は荒れやすく、有事の際に水があふれないよう、橋が水の流れを妨げないようにとの配慮も必要になる。
そうしたもろもろの課題に応える設計として、橋脚のない鋼桁橋が採用された。外側にはコンクリート化粧板をあしらった、重厚感あるデザインだ。化粧板にはブロンズの飾りが付いており、これは大阪城の象徴・桐紋の金箔瓦をデザイン化したもの。ふつうに橋を渡るだけでは目がいかないところだが、そんなところにまで細かなデザインを施しているところがなかなかにくい。

〈大阪城新橋概要〉

橋長:63.0m
幅員:12.0m
形式:桁橋(連続桁)
完成:昭和58年
行政区:中央区
JR環状線大阪城公園駅・地下鉄長堀鶴見緑地線大阪ビジネスパーク駅からすぐ。



〈参考資料〉

「大阪の橋」 松村博 松籟社 1992年

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