大江橋 由緒ある地名を関する、大阪の大動脈に架かる橋【大阪市北区】


Illustration by Hiroki Fujimoto

大江橋【大阪市北区】

大阪市の中心を突っ切る御堂筋に架かり、淀屋橋と対になる大江橋は、昼夜を問わず人や車の行き来が絶えない。
交通の要衝に架かる橋はかつて公儀橋に定められていたが、大江橋は町橋だった。町橋としては市内最大の規模を誇り、公儀橋の浪華三大橋(天満橋天神橋難波橋)に次ぐ大きさだったという。

〈江戸時代〉

大江橋は、元禄年間に架けられた堂島五橋のひとつだ。大阪で古くから親しまれてきた由緒ある橋の名、歌枕に詠まれる地名などから名前が取られており、「大江」というのは天満橋と天神橋の間、上町台地の北端あたりを指す地名だったらしい。古来より多くの歌に詠まれ、愛された土地であった。

玉藻かる大江の浦の浦風につつじの花は散りぬべらなり 大伴家持
渡辺の大江の岸にやどりして雲井に見ゆる生駒山かな 良運
あわれなり長柄は跡も朽ちにしを大江の橋の絶せざらなむ 藤原俊成

大江橋の北詰には堂島米市場があり、日本の米の価格がここで決められていたという。米市場は3ヶ所にまで増え、明治に至るまで大いに繁盛した。
そんな場所にあったので、大江橋は町橋といえど規模の大きいものであった。橋の長さはおよそ104mで、浪華三大橋に次ぐ長さ。幅員も4.9mと、町橋としてはなかなか広い。

〈明治期〉

明治18年(1885年)の大洪水で流失した後、木橋だった大江橋は鉄柱木桁に架け替えられる。この際に大江橋と淀屋橋は直線の道で結ばれた。さらに大阪駅まで一直線の道が通るのは、明治35年(1902年)に大阪新道が開通してから。こうして大江橋の架かる道は大阪のメインストリートになったわけだが、しかしまだ大江橋は鉄橋木桁のままだった。

鉄橋化されたのは、明治42年(1909年)の大火災、「キタの大火(天満焼け)」の後である。被害戸数が1万軒を超えたというこの火災は、7月31日に空心町のメリヤス工場から出火し、強い東風に煽られて延焼。一昼夜以上も燃え続け、その日は西野田にまで達したという。空心町というのは今の天満橋界隈(橋ではなく、地名の天満橋。JR環状線天満駅の東側あたりである)だから、被害の甚大さが窺える。
「午後八時一〇分頃、大江橋はすさまじき音と共に終に焼け落ちたり」と、当時の新聞では報じられている。すぐに渡し舟が設置されたが、交通量の多い橋だったため市民生活への影響が大きく、陸軍が動いて約4日で仮橋を完成させている。

鉄橋として大江橋が架け替えられたのは、明治43年(1910年)。もとより、市電第二期線事業に伴って架け替え計画は進んでいたが、天満焼けを受けて工期が伸びたという。橋の長さは約85m、幅員は21.8mだった。

〈大正・昭和期〉

大江橋畔日本銀行(大阪) 大正後半
大江橋畔日本銀行(大阪) 大正後半(大阪市立中央図書館所蔵)所収

大正10年(1921年)に第一次都市計画事業が動き出すと、御堂筋の建設に伴って大江橋、淀屋橋にも手が加えられることになった。両橋のデザインが懸賞金を設けて公募にかけられたのは、淀屋橋の項に書いた通りである。
ちなみに、この時に三位入選したフランス中世風のデザインが、昭和4年(1929年)に架け替えられた田蓑橋に流用されている。


Illustration by Hiroki Fujimoto

〈現在〉

現在の橋が竣工したのは、昭和10年(1935年)のことである。
大江橋は、中之島の景観を意識してデザインされており、その点が高く評価されている。またその下を地下鉄御堂筋線が走っており、地下鉄と一体的な特殊な基礎構造は、建設技術の側面から見ても見事なものであるらしい。そうしたことから大江橋は、淀屋橋とともに平成20年(2008年)に、国の重要文化財に指定された。コンクリート橋としては珍しく、東京の日本橋、新潟の萬代橋に続いて3例目。

〈大江橋概要〉

京阪中之島線大江橋駅すぐ。また、地下鉄御堂筋線淀屋橋駅、京阪本線淀屋橋駅より5分ほど。
昭和10年(1935年)竣工。

〈参考資料〉

「大阪の橋」 松村博 松籟社 1992年

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